群馬県伊勢崎市で、中小の工場向けに廃棄物コストの見直しを手伝っている新井です。
以前は太田市の自動車部品の成形メーカーで、生産管理と資材を22年担当していました。
最近、相談先の工場でよく聞かれるのが「GRSって何ですか」という質問です。
再生材の見積もりを取ったら「GRS認証品」と書いてあった。
あるいは、納入先から「再生材を使うなら認証の書類を出してほしい」と言われた。
きっかけはだいたいこのどちらかです。
私も成形メーカーにいたころは、再生材といえば物性表とロットの安定性しか見ていませんでした。
認証の書類まで気にするようになったのは、独立してからです。
この記事では、GRSの基準書の原文と認証機関の公開情報をもとに、購買や品質の担当者が押さえておきたい点を整理します。
数字の条件、書類の種類、2026年末から始まる制度の切り替えまで、ひと通り確認できるようにしました。
目次
GRSは「再生材の中身」と「作り方」を第三者が確かめる認証
運営はアメリカの非営利団体Textile Exchange
GRS(Global Recycled Standard、グローバル・リサイクルド・スタンダード)は、製品に含まれる再生材の割合を第三者が確認する国際的な認証です。
国内で審査を行っている認証機関、Control Union JapanのGRSの解説ページによると、2008年にControl Union Certificationsが開発し、2011年1月1日に運営がTextile Exchangeへ引き継がれました。
いま使われている基準は「GRS 4.0」です。
Textile Exchangeの公式サイトによれば、2017年7月1日に公開されました。
任意の認証なので、取っていなくても法律違反になるわけではありません。
確かめるのは含有率だけではない
GRSで確認されるのは、再生材の割合だけではありません。
Control Union Japanの説明では、認証を受けるには次の条件を満たす必要があります。
- 再生材を20%以上含み、その由来を第三者が確認していること
- 原料の回収から製品まで、材料の流れを追えること(トレーサビリティ)
- 排水や廃棄物、エネルギーの管理に取り組んでいること
- 有害な化学物質の使用を制限していること
- 児童労働や強制労働がなく、労働時間や賃金のルールを守っていること
- 第三者の認証機関による年1回の監査を受けていること
再生材の割合だけを追う姉妹規格として「RCS(Recycled Claim Standard)」もあります。
GRSは、そこに環境・化学物質・労働の条件を上乗せした認証と考えると分かりやすいです。
名前は繊維向けでも、プラスチックで使われている
Textile Exchangeは、もともと繊維・アパレル業界の団体です。
そのため「うちは樹脂だから関係ない」と思われがちですが、そうとも言い切れません。
ドイツ連邦環境庁が2026年に公表した、再生プラスチック向けの認証制度をまとめた資料にもGRSが入っています。
繊維だけでなく、再生プラスチックの製造工程や最終製品にも使われるようになってきた、と書かれています。
担当者が押さえておきたい数字と言葉
20%と50%は別の条件
GRSの数字で混同されやすいのが、20%と50%です。
GRS 4.0の基準書(英語・PDF)を読むと、2つは別の条件だと分かります。
| 再生材の割合 | GRSでの扱い |
|---|---|
| 20%未満 | GRSの対象外 |
| 20%以上50%未満 | GRS認証品として扱えるが、製品にGRSのラベルは付けられない |
| 50%以上 | 製品ごとにGRSのラベルを付けられる |
部品メーカーの立場で言いかえると、再生材を30%混ぜた部品はGRS品として納められても、GRSのロゴを付けた製品にはならないということです。
最終製品にロゴを付けたいと考えている納入先なら、配合の比率を決める前に50%の線を意識しておく必要があります。
あとから比率を上げると物性も変わるので、試作の段階で確認しておくのが無難です。
ラベルを付けるには、もうひとつ条件があります。
企業間の最後の取引の売り手まで、サプライチェーンのすべての段階が認証を受けていなければなりません。
途中に認証のない会社が挟まると、そこでGRS品としての流れは途切れます。
年間の取扱額が1万ドル未満で、梱包し直さない商社などには例外があります。
再生ペレットを使った部品なら、流れはおおむね次のようになります。
- 端材や使用済み製品を集める回収・集積の段階
- 粉砕してペレットにする再生(リサイクル)の段階
- ペレットを使って部品や製品を成形・加工する段階
- 完成品を企業向けに販売する段階
認証が必要になるのは、再生の段階から後ろです。
回収・集積の段階は、自己申告と書類の提出、現地訪問で確認すると基準書に書かれています。
端材を売る側の工場が、自社でGRSを取る必要はないということです。
「GRSを取っていないと端材を引き取ってもらえないのでは」と心配する声も聞きますが、そこは安心してよい部分です。
プレコンシューマー材とポストコンシューマー材
GRSでは、再生材を出どころで2つに分けて扱います。
定義は、環境ラベルの国際規格であるISO 14021にならっています。
| 区分 | 中身 | 現場での例 |
|---|---|---|
| プレコンシューマー材(PIR) | 製造工程で出て、廃棄物の流れから外された材料 | 成形の端材、取引先から回収した不良品 |
| ポストコンシューマー材(PCR) | 製品として使われたあと、本来の用途に使えなくなった材料 | 使用済みの家電の外装、回収した容器 |
成形の現場の人に知っておいてほしいのは、ここからです。
基準書には、同じ工程で粉砕して戻せるランナーや不良品などのリグラインドは、プレコンシューマー材に含めないと書かれています。
つまり、自社の中で回しているだけの粉砕材は「再生材を使った」と主張する根拠になりません。
私がいた工場でもランナーは粉砕して戻していましたが、これはGRSの考え方では再生材に入らないわけです。
スコープ証明書と取引証明書
GRSの書類は大きく2種類あります。
| 書類 | 何を証明するか |
|---|---|
| スコープ証明書(SC) | その会社・工場が、どの製品についてGRSの認証を受けているか |
| 取引証明書(TC) | 個々の出荷で渡した品物がGRS品であること |
ドイツ連邦環境庁の資料によると、取引証明書にはロットごとにプレコンシューマー材とポストコンシューマー材の割合が書かれます。
証明書の有効期間は1年です。
去年もらった証明書のコピーで済ませず、毎年更新されたものを受け取るようにしてください。
発注前に確認したいこと
仕入れ先から「GRS品です」と言われたら、私は次の順に確認しています。
- スコープ証明書の会社名と住所が、取引先の登記と一致しているか
- 認証の対象に、買おうとしている樹脂や製品が入っているか
- 有効期限が切れていないか、どの認証機関が出したものか
- 出荷ごとに取引証明書を出してもらえるか
- ポストコンシューマー材の割合はどれくらいか
最後の項目は、納入先が「ポストコンシューマー材を何%以上」と指定してくる場合に効いてきます。
同じGRS品でも、端材由来か使用済み製品由来かで中身は違います。
書類をお願いするときは、何を出してほしいかを具体的に書くと話が早く進みます。
私が相談先の工場に渡している文面は、たとえばこんな形です。
いつもお世話になっております。
御社の再生ペレット(品番:〇〇)の採用を検討しております。
つきましては、以下の書類をご提供いただけますでしょうか。
・GRSのスコープ証明書の写し(有効期限が分かるもの)
・初回出荷分の取引証明書
・ロットごとのポストコンシューマー材の比率が分かる資料
お手数をおかけしますが、よろしくお願いいたします。
ここで返事が遅かったり、証明書の対象に該当の品番が入っていなかったりしたら、一度立ち止まって確認するようにしています。
品質は別に確かめる
GRSの基準書には、GRSは品質や法令への適合を扱わないと明記されています。
認証品だから物性も安定している、とは限りません。
成形メーカー時代、再生材でいちばん手を焼いたのは流動性のばらつきでした。
ロットが変わると成形条件を合わせ直すことになり、ショートやバリの不良が出たこともあります。
認証の書類とは別に、ロットごとの検査成績書とサンプルでの試し打ちは欠かせません。
私は最低でも、流動性の値と異物の有無、色のばらつきの3点を成績書で見るようにしていました。
量産に入る前に、2〜3ロット分のサンプルで条件を出しておくと、切り替え後のトラブルがかなり減ります。
認証と品質は別の話として、両方そろえて初めて安心して使える、というのが私の考えです。
国内での取得例:群馬県太田市の日本保利化成
身近な例として、私の地元である群馬県東部の会社を紹介します。
太田市東新町にある日本保利化成株式会社です。
同社のウェブサイトによると、工場から出る端材と、家電などの使用済みプラスチックを有償で買い取り、再生ペレットにしています。
ABS、PP、PC/ABSなど50種類以上の樹脂を扱い、ポストコンシューマー材から作ったペレットがGRSの認証を受けているそうです。
サイトのお知らせ欄には、2025年4月にGRSの認証を受けたと掲載されています。
新しく取引を始めるときは、証明書と一緒に会社の基本情報も確認しておくと安心です。
法人番号や設立年、所在地の変更履歴は、日本保利化成株式会社の法人番号や登記の履歴をまとめたページで確認できます。
スコープ証明書に書かれた住所と見比べる使い方もできます。
2026年末から始まる切り替えと、国内の法改正
GRSは新しい統一基準へ移る
Textile Exchangeは2025年12月12日、新しい統一基準「Materials Matter Standard」の最終版の基準を公表しました。
同団体の発表によると、新基準は2026年12月31日に発効し、2027年12月31日から必須になります。
新基準の最初の版には、GRSとRCSが扱ってきた再生材も含まれます。
必須になる日までは、今の基準を使い続けられます。
「GRSがなくなるなら、いま認証品を選んでも意味がない」と考える必要はありません。
Textile Exchangeの移行案内では、新しい仕組みにも材料の流れを追う道具が組み込まれると説明されています。
ただ、審査の中身や証明書の様式は変わるかもしれません。
取引先に、認証機関から移行の案内が届いているか聞いておくと安心です。
国内では再生プラスチックの利用計画が求められる
国内でも動きがあります。
2025年に改正された資源有効利用促進法が、2026年4月に施行されました。
環境省の資料「改正資源有効利用促進法の施行に向けた関係法令の整備について」によると、再生材の利用を義務づける製品を指定し、その製造事業者に利用計画の提出と定期報告を求める仕組みです。
環境省が2025年9月にまとめた資料では、対象としてプラスチック製の容器包装、家電4品目、自動車が検討されていました。
法律がGRSの取得を求めているわけではありません。
それでも、自動車や家電の部品をつくる工場にとって、再生材の出どころと割合を書類で示せるかどうかは、これから取引の条件になっていくと私は見ています。
GRSの証明書は、そのときの説明材料のひとつになります。
まとめ
GRSについて、メーカーの担当者が押さえておきたい点を振り返ります。
- 再生材の割合に加えて、環境・化学物質・労働の条件も第三者が確認する認証
- 対象は再生材20%以上の製品で、ラベルを付けられるのは50%以上
- 同じ工程で戻す粉砕材は、プレコンシューマー材に数えない
- 書類はスコープ証明書と取引証明書の2種類で、有効期間は1年
- 品質は対象外なので、物性の確認は別に必要
- 2026年12月31日から新基準への切り替えが始まる
再生材の話は購買・品質・営業と部署をまたぐので、担当者がひとりで抱えがちです。
まずは今の仕入れ先に、スコープ証明書の写しを1枚もらうところから始めてみてください。
書類を手元に置いて話すと、取引先とのやり取りがぐっと具体的になります。
